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要旨:日本人は、四季及びそのうつろいを大事にする。「旬」という言葉も、四季折々の事物・現象をさして用いる場合が多い。四季折々のまつりや遊山などの行事をこれほどにまで多様に発達させた「旬」の文化は、ほかの国に比べて、独特な民族的特色を含み、已に日本人の生活の各方面(年中行事・節句、祭り、行事食など)に深く滲み込んでいる。その上、日本人は四季のうつろいに敏感であることをもって、文学や歌謡、芸能をも多様に発達させてきたのである。 そのひとつの象徴として、俳句がある。日本文学史上では歴史が浅いが、私たちは俳句をもって日本の短詩型文学を語ることがしばしばあり、それほどに俳句は、日本人の心の中に浸透しているのである。 俳句には、「季語」を織り込む。五・七・五の十七音のなかに季語がなければ、一般に俳句とは認められない。そのとりきめも衆知のとおりであり、ゆえに俳句は、私たち日本人の四季感を表徴する短詩型文学として共有されてきたのである。 近年、一般的には季節を四区分し、春・夏・秋・冬をもって四季とする。あるいは、俳句の季節も四季だけ、と思い込んでいる者も多いのではなかろうか。それは、多分に学校教育の影響による概念化なのであろう。学校教育では、四季以外の季節の区分や種類を教えなかった。それを批判するわけではないが、歴史がはぐくんできた日本人の季節感は、さほどに単純ではないのである。
キーワード:旬年中行事食事詩歌
目次 要旨 中文摘要 1.序論.…1 2.日本人の生活中に染みこんだ「旬」とその表現….2 2.1 年中行事・節句 2.2 行事食及び旬の食材 2.3 関係する詩歌 3.「旬」に敏感である原因…10 3.1自然環境及び地理条件 3.2「緑」に対する意識―自然の色彩と食物の鮮度 3.3四季に対する感覚―季語に見る儚さと楽しみ 3.4精神的生活の重視―神道の信仰と自然を尊ぶアニミズム 4.日本の「旬」からの啓示.… 18 4.1日本人の生活を集約する「旬」 4.2「旬」の将来展望 4.3中国にもたらされる啓示 5.結論20 参考文献..21 謝辞.22 |